
東京で「カスハラ」対策条例を導入、サービス業従業員を守る
顧客によるハラスメントが増加、初の対策条例が施行へ
日本は、接客サービスの質の高さで知られていますが、近年、増加している一部の顧客の問題行動が深刻化しています。特に、従業員への暴言や過剰な要求、さらには暴力に至る「カスハラ(カスタマーハラスメント)」が社会問題となり、これに対応するために東京都は国内初となる条例を導入することを決定しました。
この新条例は2024年4月に施行される予定ですが、罰則は設けられていません。それでも、専門家はこの条例が「カスハラ」問題の認知を広げ、顧客が従業員に対する態度を見直す契機となることを期待しています。
増えるカスハラ被害、サービス業の従業員が直面する現実
労働組合が今年実施した調査によると、日本の労働者の75%が従事するサービス業で、約半数の従業員が顧客からの嫌がらせを受けた経験があると報告されています。これには暴言や過度な要求、暴力、さらにはSNS上での個人情報の晒し行為が含まれます。
例えば、東京のスーパーの副店長が、購入した豆腐が傷んでいたと主張する顧客から電話を受け、自宅まで出向いたところ、その豆腐は購入から2週間以上経過していたことが判明。それにも関わらず、顧客は副店長に土下座を強要したというケースもありました。
また、地方自治体の窓口でも同様のトラブルが増加しており、ある東京区役所の女性職員は、住民から「死ね」と言われた経験を語っています。
労働省や企業も対応強化へ、カスハラ対策の広がり
厚生労働省は、公共交通機関や飲食店、コールセンターなど幅広い業種でのカスハラ対策を強化することを検討しています。さらに、東京の条例が承認された背景には、労働組合や業界団体からの強い要請があり、これを受けて他の都道府県でも同様の措置が検討されています。
また、一部の企業では問題のある顧客に対して警察を呼ぶ対応を進めたり、任天堂のように、嫌がらせを行う顧客との接触を断つ方針を打ち出すなど、対応が進んでいます。
消費者至上主義の影響、企業と従業員のバランスを取り戻すために
関西大学の社会学教授、池内弘美氏は、カスハラの増加の背景には、企業が厳しい経済環境の中で「お客様は神様」という考え方を広げ、結果的に顧客に過度な優位性を与えてしまったことがあると指摘しています。このような「消費者至上主義」の風潮が、一部の顧客の行動をエスカレートさせているといいます。
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