
人手不足倒産が過去最多に 賃上げ原資の確保が課題に
帝国データベースにより、2024年度上半期(4月〜9月)の人手不足による倒産件数が163件に達し、過去最多を更新しました。前年同期の2倍以上という急増ぶりで、労働市場の流動性が高まる中、特に小規模事業者が大きな打撃を受けています。倒産に至った理由の多くは、従業員の退職や採用難、そして人件費の高騰によるものです。
この背景には、建設業や物流業など「2024年問題」に直面する業種が特に深刻な影響を受けていることが挙げられます。2024年度上半期の建設業では55件、物流業では19件の倒産が報告されており、これらの業種での倒産件数が全体の約45%を占めています。また、飲食業界でも人手不足の影響が広がり、倒産件数が前年の2件から9件へと大きく増加しています。
コロナ禍を経て、労働市場が回復する一方で、労働条件の厳しい業種や小規模事業者にとっては、人材の確保が難しい状況が続いています。特に、従業員数が10名未満の企業が多く倒産している点からも、こうした企業が直面する課題の大きさが浮き彫りになっています。
賃上げのための原資確保が必要
人手不足の解消には、賃上げが大きなカギとなっていますが、そのためには価格転嫁が不可欠です。特に建設業や物流業では、2024年4月に施行された時間外労働の上限規制がさらなるコスト増を引き起こしており、これが倒産を加速させる一因となっています。しかし一方で、価格転嫁の状況が徐々に改善しつつあり、賃上げのための原資を確保する動きが進んでいます。物流業では2022年12月時点で全体平均を下回っていた転嫁率も、徐々に差が縮まってきています。
今後は、さらなる価格転嫁と労働環境の改善によって、企業が安定した人材確保を進められるかどうかが、人手不足問題の解決に向けた重要なポイントとなりそうです。特に、小規模事業者にとっては、この厳しい経済環境を乗り越えるための工夫が求められています。
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